utopistics

日々のことを。

2019-01-01から1年間の記事一覧

午睡

自転車を押しながら住宅街を進む もう少し先です、そこを右ですと 案内しながら前を歩くひとを 少し背丈を伸ばした影が伴走する ガラガラと門扉を開ける音、チャイム お暑いところすみませんと 年老いた女性が腰を曲げる きれいに手入れされた 深い色の柱 二…

不知火と

どうしたって遠くの方から 光ってくるんだ まっ黒い海のせり出す先と 烏賊漁の船のほろほろの灯と 一時間遅れの朝焼けと 白くけぶった空と海の 境目に浮かぶオレンジの浮子と ざあーっと潮の引いた浜の面と 藤壺は素知らぬ顔で 顔を出したりしまったりして …

ボルタンスキーと死の受容プロセス

ボルタンスキー展に出かけてきた。 彼の作品を見に行くのは二〇〇九年越後妻有(最後の教室)、二〇一〇・二〇十三豊島(心臓音のアーカイブ)以来だ。 国立新美術館のLifetimeは初期のブルース=ナウマンのような、まさに原題どおりに吐きそうな映像から始…

ゆで卵と伯爵

あるところにゆで卵の大好きな伯爵がいらした。 給仕の用意するつるりとしたゆで卵を 毎朝の楽しみにしていたが ある日、給仕は都合で実家の里に帰ってしまった。 伯爵は困り果てたが いつまでもないものを嘆いてもいられない。 料理などしたことがなかった…